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12月26日(日記)老いの特権

12月26日(日記)老いの特権

晴れ
冬至が過ぎ、日が少しずつ長くなっていくのを味わう。

朝、散策していると、名もない木が、朝日を浴びながら木の葉がきらめく様を見かけるだけで、魅入ってしまうことが多くなった。「なんて、美しいんだろう」と。

たぶん、数年前まではきっと見ずに通り過ぎていた気がする。前にも書いたが、老いることは悪いことばかりではない。見えにくくなったり、聞こえなくなったりと、感覚器官としての感度は悪くなるが、感受性としては研ぎ澄まされていくと。

そう思うと、老いるのも悪くない気がする。たった一本の木を見ているだけで、幸せな気持ちになれるのだから。そのうち、外部の娯楽など必要としなくなり、窓辺から通りすがりの人を見ているだけで、あれこれ想像して、勝手に幸せな気持ちになれるのかもしれない。

だから、老いた人がよく庭先にぼーっと見つめながら、ニコニコと微笑んでいる気持ちが何となく分かるようになってきた。もちろん、生老病死、老いるのは苦しい。当然である。

しかし、老いることに楽しさを見いだすこと。自分の中で、鈍くなる部分と、研ぎ澄まされていく部分。そこを見極めていきながら、精神性を高めていくのも一興かもしれない。

未来は若者のためにあり、過去は老人のためにあると言われる。しかし、今(現在)をとことん味わえ尽くせる特権は、老人にこそあるような気がする。

冬川で はしゃぐ鳥らを うらやんで

仲村比呂
小説家
主に小さい子から読める物語を作っています。文学は最強です。

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