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11月1日(日記)時を経て、再び能楽に目覚める


秋の雨は、少し物悲しい気持ちになる。

小林秀雄全集を読んでいて、ふと以下の一文が目に入る。

凡そ世界の演劇史を通じて、最も偉大且つ高貴なるモニュメントとして残るものは、チェホフの戯曲と能楽の舞台であろうとは、私のかねがね信じるところであるが・・・(中略)、舞台のイメージが最も単純な姿を以て最も深きに達している点、比類なき芸術と呼ばれるべきものであった。
(岸田國士 「劇壇左右展望」)

ずっと昔に、三島由紀夫の「近代能楽集」から、古典的能楽にも興味を抱いて、能楽関連の本を読んだ時代があったけれど、やはり文字だけで追うのは無理だと思って、いつのまにか放擲してしまった過去をふと思い出す。

この一文に啓発されて、YouTubeで能楽関連の動画を探す。すると、結構な数がある。適当なのを二三本観たら、単純にいいなとと思った。
岸田さんが言う、芸術的価値などとは関係なく、あの時間と空間を軽々と超越する世界観に、感動と言うよりも深いシンパシーを感じた。

それは、きっと最近短歌や俳句をもう少し深くやってみようと思うことにも関係があるかもしれない。というか、単純に年を取ったのか。

しかし、あの三島由紀夫が、能楽が持つ摩訶不思議な世界に魅了された理由がやっとわかった(気がする)。

これは、小説に活きる。何となくそう思った。もう少し突き詰めてみよう。

過ぎてから 秋惜しみ始める 寒き雨

仲村比呂
小説家
主に小さい子から読める物語を作っています。文学は最強です。

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